【浜中美佳 二十六歳】
名札をピンク色のワンピースの胸につけた。
さー、男漁るぞー。
ワイングラス片手にぶらぶら。
イイ男、特になし。
料理、なかなか。
ケーキ、オイシイ。
ま、ホテルのお見合いパーティーなんてこんなもんだよね。
ケーキ、もひとつケーキ、もいっこケーキ。
ぽん、と肩に手。
振り返ると男。
「あのさ、○○大学の浜中さん?」
はい、そうですー。と心にもない返事。
【佐伯陽一 二十六歳】
「俺、同期なんだけど、知らないですよね。」知ってるわけがない、とは言わない。
しゃべり続ける佐伯さん。
「浜中さんって、人気ありましたよね。
なんていうか高嶺の花?
俺なんか遠くから見てるだけでしたね。
でも今日はすぐにわかりましたよ。
そのピンクのワンピース。
卒業式に着てきましたよね。
とても綺麗でしたよ。
あ、もちろん今もですって。」
私が卒業式に着て行ったのは振袖。
口に出しては言わない。
会話を世間話に持っていく。
趣味とか、いろいろ。
佐伯さんから手渡される小さな紙。
携帯番号と、メールアドレス。
「気楽にメールしてね。待ってるよ。」
今日の収穫、おいしいケーキ・四つ下の感じいい男。
妹の梨佳から借りたワンピース。四つサバを読んだ年。
あはははは、餌の割りに大収穫!
ホテルの前の階段を三段ぴょん。
ピンクのワンピースひらり。
着地でヒールがぐき。
妹と間違えられるなんて、私まだまだいけそうだ。
携帯に、さっき貰ったメアドをピポパ。
騙されたからって逃げるなよ、そう簡単には逃がさないぞ。