「すみません、入部希望なんですけど……」
ゆっくりと部室の扉を押す。
ドアには『文芸部』とネームプレートが貼ってあった。
中では印刷機に製本機、それと裁断機がせわしなく動いている。
紙を山積みにして持っている先輩が、私のほうを振り向いて笑顔を見せた。
「はじめまして、俺が部長の赤沢勝也だ。」
印刷機に紙をセットし、スタートボタンを押した先輩が私のほうを向いた。
「僕は会計の青山修司。彼は副部長の緑川明彦だよ。」
そう言って、製本機を操作している先輩を指差した。
私がぺこりと頭を下げると、無言でお辞儀を返してくれた。
「あたしは黄金井千里。小さい金じゃなくて、黄色い金って書くんだ。よろしく。」
裁断機の刃をがたりと下ろした先輩が言った。
机の上で数冊まとめてとんとん、とそろえた先輩が、一冊持って私の目の前に来た。
「私は編集の桃原恵。はい、新入生歓迎号一足先にあげるね。」
「ありがとうございます!」
『一足先』というのがなんだか特別で嬉しかった。
そして、次からは私の文章がこの部誌に載ると思うとさらに嬉しくなる。
「入部早いわね。まだ新歓終わってないのに。」
新歓とは新入生歓迎会。
大抵の子はこの会で行われる部活勧誘劇を見て部活を決める。
でも私は、
「はい、文化祭で部誌を見たときから入るって決めてましたから。」
私がにっこり笑うと、先輩たちもみんな笑顔になった。
私はついでに、気になっていたことを言うことにした。
「先輩たちって、赤・青・緑・黄・桃ですよね。
これってなんだか文芸戦隊……」
「「「「「それ新歓のネタ!」」」」」