前回までのあらすじ
米は、炊飯器という名の拷問部屋に閉じ込められ、じわじわと熱を加えられるのだ。
しかし米はその運命に今、立ち向かう!
そんな米の夢は、いつしか人間を支配し、『コメ帝国』として世界を征服することだ!
しかし子供に拾い食いされたりと前途多難であった……。
家には段ボール箱が積み上げられていた。
引越し業者がせわしなく出入りし、段ボール箱たちを外のトラックに運び込む。
住み慣れた家との別れのときだ。
母親が掃除機をかける手を休めてつぶやいた。
家具をどかすたびにゴミとこんにちはする。十年以上積もったほこりは凄まじい。
息子の声に和室へ行くと、タンスのあった場所の畳が、くっきりと緑のまま残っている。
「なんかすごいよね。」そうね、と笑い返す。この家に引っ越してきたときのままの緑。
その壁際にびっしりと米粒が落ちていた。
タンスと壁のわずかな隙間。
「そういえば、翔太ったらハイハイし始めたころ、台所で米粒を拾い食いしてたのよ。」
「なんだよ、突然昔のこと……。ここのとこ、掃除機かけるよ?」
「隊長、見つかりました!敵は人間二名です。戦闘態勢に入りますか?」
「いや、とりあえずあの箱の裏に隠れるぞ。」
米たちの侵略はすでに和室まで来ていた。台所から地道に、少しずつ勢力を広げていったのだ。
しかし、米たちは掃除機を相手に、全滅の他に道はないのであった……。