前回までのあらすじ
米は、炊飯器という名の拷問部屋に閉じ込められ、じわじわと熱を加えられるのだ。
しかし米はその運命に今、立ち向かう!
そんな米たちの夢は、いつしか人間を支配し、『コメ帝国』として世界を征服することだ!
彼らは、アナタの家の流し台の下で復讐のときを狙っているのかもしれない……。
流し台の下には米粒がびっしりと整列している。
白米、もち米、タイ米、インディカ米、玄米、胚芽米、強化米……。
そのリーダー格らしい偉そうな米が、前に立ち、全体を見回しながら演説をしている。
「諸君、よく集まってくれた。」
整列している米たちは、きらきらとした目でリーダーを見つめる。
長いこと流しの下に潜伏していた。
長かった。
いよいよ今日は出撃するのだ!『コメ帝国』の夢は膨らむばかりだ。
「まずは調査隊、外の様子を見てくる。一般兵は次に集合をかけるまで解散だ。」
びっしりと並んでいた米粒が思い思いの場所へと行く。
何十粒かの米が残り、五、六粒ごとの班に別れ、指示を聞く。
「我々はここの外を知らない。初めて外に出るというわけだ。何があるかわからない。くれぐれも慎重に行って欲しい。」
米びつから流し台の下へと逃げてきた米たち。
初めての世界に期待と不安で胸を膨らませた。
「出撃っ!」
「こらっ、しょうちゃん!」
この家には最近赤ん坊が生まれた。
台所で座り込んでいる彼を母親がしかりつける。
「何を口に入れてるの?……米粒?何でも拾い食いしちゃだめよ!」