部誌に載せるつもりだったが原稿なくしたんだ

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五つ目の季節

雨が降る季節。
雪が降る季節。
鳩が降る季節。

『今日は全国的に晴れですが、午後から鳩が降るでしょう。』
テレビの前にじっと座っていた幼女は、天気予報を聞くと台所にいる母親の元へ走っていった。
「ママ、ハトだって!ハトが降るって!」
「よかったね、楽しみだね。」
母親は我が娘の頭をくしゃっとなで、ため息をついた。
「困った……。洗濯物が干せないじゃない。」



ハトはそらたかくまでとんでいきます。

とんでいるうちに、
たいようのひかりをあびてまっしろになります。

ハトはくものおうちにすみます。

でも、
くものおうちはだんだんハトでいっぱいになります。

あたたかくなったころ、
ついに、くものおうちはぱんぱんになってハトたちがとびだします。

ハトがふってくるのです。


幼女は絵本を閉じ窓の外を見た。 表情がぱあっと明るくなる。
「ハトだあ!」
走って庭に出ると空を見上げる。 空は真っ白。 ハトで埋め尽くされ空本来の青はひとカケラも見えない。 母親も娘を追って庭へ出た。 娘と同じように空を見上げる。
「……ずいぶんたくさん降ってきたのね。


今夜はごちそうね。」



雨は川へ海へ流れ込み、空へ還ります。
雪もとけ、川へ海へ流れ込み空へ還ります。

鳩は私たちのおなかの中へ………